【選手列伝】熊谷紗希 W杯決勝のPK戦で決勝キック、日本代表173試合のセンターバック
熊谷紗希選手は1990年10月17日、札幌市生まれのDF。浦和レッズレディースからフランクフルト(2011〜13年)、リヨン(2013〜21年)へ移籍し、リヨンでは女子チャンピオンズリーグ優勝(2015-16、2016-17、2019-20など)を経験した。その後バイエルン、ローマ、ロンドン・シティなどを経て、2026年9月にウェストハムへ移籍している。2019年にはアジア女子最優秀選手に選ばれた。
日本代表では173試合に出場。2011年のW杯優勝では、決勝のPK戦で最後のキックを決めて優勝を決めた(2011年W杯の総括)。2012年五輪の銀メダル、2015年W杯の準優勝を経て、2019年と2023年のW杯ではキャプテンを務めた(2019年・2023年の総括)。
札幌から常盤木学園、そして浦和へ
兄の影響で小学校からサッカーを始め、クラブでは女子は一人だったという。中学卒業後に親元を離れて宮城県仙台市の常盤木学園高校へ進み、1年からレギュラーとして活躍。3年時には主将として全日本女子ユース3連覇を果たした。2009年に浦和レッズレディースに加入すると、1年目からボランチとして全試合に出場し、クラブのリーグ優勝に貢献した。
代表には高校2年生だった2008年3月に初選出された。同月のキプロス・カップのカナダ戦で17歳でデビューし、同年のU-20W杯にも出場している。2010年にはU-20W杯で主将を務める一方、なでしこジャパンの主力としても定着し、東アジア選手権とアジア競技大会の両方で優勝を経験した。
2011年W杯、決勝のPKを決めた瞬間
2011年のドイツW杯では、センターバックのレギュラーとして全試合にフル出場。決勝のアメリカ戦では、PK戦の4人目のキッカーを務め、成功させて日本の初優勝を決めた。優勝が決まった直後には、宮間あや選手(宮間氏の列伝)が敗れたアメリカの選手たちに歩み寄って敬意を示し、日本チームの振る舞いは世界で称賛された。同年には、なでしこジャパンの一員として国民栄誉賞、紫綬褒章を受けている。2012年のロンドン五輪では全試合に出場して銀メダル獲得に貢献した(2012年五輪の総括)。
欧州でのキャリア、リヨンの黄金期
2011年7月、W杯優勝後にドイツのフランクフルトへ移り、10月には移籍後初ゴールを決めた。2013年6月にはフランスの名門、オリンピック・リヨンへ移籍した。ここで8シーズンを過ごし、2015-16シーズンのUEFA女子チャンピオンズリーグ決勝ではヴォルフスブルクを破って優勝、自身は最優秀選手に選ばれた。翌2016-17シーズンも連覇し、2019-20シーズンの決勝でも先発してミドルシュートで得点を挙げ、男女を通じて日本人選手として初めてチャンピオンズリーグ決勝で得点した。
- リヨン在籍中:リーグ優勝7回、フランス杯6回、女子CL5回(2015-16、2016-17、2017-18、2018-19、2019-20)
- バイエルン(2021〜23年):2022-23シーズンにリーグ優勝
- ローマ(2023〜25年):2023-24シーズンにセリエAとコッパ・イタリア優勝、セリエAの年間ベストイレブン
- ロンドン・シティ(2025年):2部から、WSL初昇格を決める最終戦に先発
- ウェストハム(2026年〜):WSLのクラブへ、契約期間1年で加入
なでしこジャパンのキャプテンとして
2017年1月には高倉麻子監督(高倉氏の列伝)から新キャプテンに任命され、2025年5月までその役割を務めた。2018年のアジアカップ優勝(女子アジアカップまとめ)、2019年のW杯16強(2019年W杯の総括)、2020年東京五輪8強、2023年のW杯8強(2023年W杯の総括)などを主将として経験した。2024年のパリ五輪ではブラジル戦の後半アディショナルタイムにPKを決め、劇的な逆転勝利につなげている。2025年のシービリーブス杯、2026年のアジアカップでも優勝メンバーに名を連ねた。
センターバックだけでなく守備的MFもこなせる万能型で、予測と戦術眼に優れる。2024年には女子ゴールデンフット賞を受賞するなど、アジアを代表するDFとして世界的に評価されている。